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レベル1)スタートアップ編

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はじめに

こんにちは!CGWORLDリサーチャーのますく@3DCGです。今回は、普段美術大学で3DCGを教えている私が、学生たちの間で急速に普及している3Dプリンターの魅力をお伝えします。

積層式3Dプリンターは長らく「未来を先取りしすぎた実用性のない玩具」と見られてきましたが、状況は一変しました。「爆速機」や「マルチカラー機」の登場で精度が飛躍的に向上し、価格も手の届く水準に。ホビー領域にとどまらずプロのCGクリエイターの中でも注目度が急上昇しています。

従来この領域はエンジニアやCAD系オペレーター向けに紹介されることが多く、アーティスト向けツールを活用した制作情報はほとんど見当たりません。しかし、技術的な敷居も下がり、クリエイターが取り組みやすい環境が整った今こそアーティスト視点での活用法をご紹介します。

本記事では基礎知識から始め方、オリジナル作品制作までをステップバイステップで解説します。

Crealityについて: 「Creality」は家庭用3Dプリンターの領域で世界一のシェアを誇るメーカーで、最先端の個人向け3Dスキャナー、レーザー加工機など、デジタルファブリケーション領域を幅広くカバーするメーカーです。この場をお借りして感謝いたします。

Step1:3Dプリンターについて知ろう

3Dプリンターとは?

3Dプリンターはデジタルデータをもとに物理的な立体物を作り出す装置です。デジタルデータを元に生産することをデジタルファブリケーションといい、従来の「削る」加工と異なり、素材を「積み重ねる」ことで複雑な形状も容易に造形できます。

近年では技術の進化とコスト低下により、個人でも高品質な3Dプリンターを手に入れられるようになりました。特に積層式3Dプリンターはその使いやすさと手頃な価格から、クリエイターやホビーストに広く普及しています。

デジタルファブリケーションと3Dプリンターの種類

3Dプリンターにはさまざまな種類がありますが、大きく分けると以下のような方式があります:

方式 使用技術 造形方法 特徴
切削方式(CNC) 切削工具 点→線で切削 高精度、金属加工も可能
積層方式(FDM/FFF) 熱で溶解 点→線で積層 最も一般的で安価、扱いやすい
UVインクジェット 液滴でUV印刷 線→面で硬化 高精細、多色造形が可能
光造形(SLA) 光(レーザー) 点→線で硬化積層 高精細、表面が滑らか
光造形(DLP) 光(プロジェクター) 面で硬化→積層 速度が速い、高精細
粉末焼結方式(SLS) レーザーで粉末焼結 層→線で焼結 サポート材不要、耐久性高い

個人用途で人気の方式は積層式(FDM)と光造形(DLP)です。DLPは高精細ですが、液体レジンを使うため家庭での扱いが難しいです。一方、積層式(FDM)はフィラメントを熱で溶かしながら積み上げる方式で、安価で入手しやすく、技術の進化も進んでいます。

FDM方式をおすすめする理由

FDM3Dプリンターが入門に最適な理由は経済性・利便性・安全性・環境性のバランスに優れる点にあります。まず経済性の面では3万円〜20万円程度と手頃な価格帯であり、他のデジタル工作機械と比べても個人が購入しやすい水準です。利便性においては材料や部品の入手が簡単で、Amazonなどで共通規格のフィラメントを購入でき、ユーザーコミュニティも充実しているため問題解決がしやすいことも魅力です。安全面では光造形方式と違い危険な薬品を使わないため一般家庭でも安心して使用できます。さらに環境面ではPLAフィラメントなどの生分解性素材を使うことができ、環境に配慮したものづくりが可能です。

Step2:コミュニティに参加して印刷データを入手しよう

3Dプリンターの分野は非常に活発で、メーカーを中心に多くのコミュニティが存在しています。これらのコミュニティに登録することでユーザー同士で印刷用の3Dモデルを共有し合ったり、収益化することも可能です。

3Dモデル共有サイトに登録して、他の人の作品を印刷してみることで理解が深まります。オリジナル作品を作る前の勉強として最適です。悩無よりも先に、まずは無料のデータをダウンロードして印刷してみましょう。

主要な3Dモデル共有サイト

Creality Cloud: Crealityの公式コミュニティ。Crealityプリンター向けに最適化されたモデルが多数。

Thingiverse: 世界最大の3Dモデル共有プラットフォーム。無料で多数のモデルが利用可能。

Printables: Prusa Researchが運営。高品質なモデルが多数公開されている。

MakeWorld: Bambulabが運営。Bambulab製プリンター向けに最適化されたモデルが豊富。

Cults3D: 無料・有料の3Dモデルを提供するマーケットプレイス。

MyMiniFactory: すべてのモデルが印刷可能であることが確認されているプラットフォーム。

Thangs: AI検索機能を活用した3Dモデル検索エンジン。

GrabCAD: エンジニアリング志向のプラットフォーム。機械部品や実用的なモデルが充実。

Step3:スライサーについて知る

映像やゲーム系のCGに特化されている方は「スライサー」という言葉を知らない方も多いでしょう。スライサーは3Dモデルデータを3Dプリンターが理解できる形式(G-code)に変換するソフトウェアです。

3Dプリンターの基本ワークフロー

設計・アイデア出し: 作りたいものを構想

モデリング: 3DCADソフトでデジタルモデルを作成

フィラメントの選定: 色や質感を元に素材を決定

スライス処理: スライサーで3Dモデルを変換

出力開始: プリンターでの造形

後処理: サポート材の除去や表面処理

代表的なスライサー

メーカー特化型のスライサー

Creality Slicer: Creality社のプリンター向け

BambuStudio: BumbuLab社のプリンター向け

汎用性の高いスライサー

Slic3r: 黎明期から開発されてきた源流的存在

PrusaSlicer: Slic3rベースの高機能なスライサー

Orca Slicer: PrusaSlicerをベースにした高速で高機能なスライサー

Ultimaker Cura: 無料で使える広く普及したスライサー

ChiTuBox: 主に光造形式向けだがFDMにも対応

多くのスライサーはSlic3rを源流としているため操作方法や基本的なパラメーターは共通して、一度理解してしまえばどのソフトも同様に扱えます。使用している機材や目的に応じて使い分けが必要ですが、まずは自分のプリンターのメーカー推奨のスライサーから始めるのがおすすめです。

スライサー特有の設定項目

スライサーには3Dプリンターを使用する上で重要な設定項目があります:

一般的な項目

温度速度: 造形の温度や速度を設定

レイヤー高さ: 1層の厚みを設定

インフィル(充填率): 内部の充填密度を設定

サポート材: オーバーハング構造を支える一時的な構造体

表面処理: 表面の質感調整

マルチカラー機特有の項目

色塗り: 複数素材の塗り分け設定

フラッシュ: フィラメント切換時の混色防止設定

Step4:フィラメントについて知ろう

フィラメントはFDM方式の3Dプリンターで使用される「インク」に相当する素材です。直径1.75mmの樹脂製細い糸状のロールとして販売されており、プリンターのノズルで加熱・溶解し、層を積み重ねて立体物を形成します。

フィラメントの材質の種類

積層式では、以下の4種類が基本的な素材です:

1. PLA(ポリ乳酸)

特徴: 植物由来の生分解性プラスチック

印刷温度: 180〜220℃

ベッド温度: 20〜60℃

メリット: 初心者向け、印刷しやすい、臭いが少ない、環境に優しい

デメリット: 耐熱性が低い(60℃程度で軟化)

用途: プロトタイプ、装飾品、おもちゃなど

2. ABS/ASA

特徴: 耐熱性・耐衝撃性に優れた汎用プラスチック

印刷温度: 220〜255℃

ベッド温度: 90〜110℃

メリット: 耐熱性が高い(約80〜95℃)、強度がある

デメリット: 反りやすい、強い臭いがある

用途: 機能的なパーツ、自動車部品、家電部品など

3. PETG(ポリエチレンテレフタレートグリコール)

特徴: PLAとABSの中間的な特性

印刷温度: 220〜250℃

ベッド温度: 60〜80℃

メリット: 耐水性・耐衝撃性があり、PLAより丈夫

デメリット: ストリンギング(糸引き)が起きやすい

用途: 機能部品、水回りの部品、屋外で使用するものなど

4. TPU(熱可塑性ポリウレタン)

特徴: 柔軟性のある弾力性素材

印刷温度: 210〜230℃

ベッド温度: 30〜60℃

メリット: 柔軟性・耐衝撃性に優れる

デメリット: 押出しが難しい

用途: フレキシブルパーツ、ケース、グリップ、タイヤなど

特に初心者にオススメなのは、PLAです。迷ったらPLAを選びましょう。

フィラメントの質感の種類

基本的なフィラメントには、様々な特殊タイプも存在します:

カーボンファイバー入り: 強度を増すための混合フィラメント

シルクフィラメント: 金属質感を再現

木質フィラメント: 木材チップ入りで木目を再現

グラデーションフィラメント: 出力位置によって色が変化

透明フィラメント: クリア素材

フィラメントドライヤーの必要性

一般的なフィラメントは湿気を吸いやすいという特性があります。

湿ったフィラメントで印刷すると印刷品質の低下やノズル詰まりの原因となります。湿ったフィラメントがノズル内の高温環境に入ると水分が急速に蒸発して気泡を形成し小さな破裂が起こります。これにより突発的に材料が押し出されるため印刷物に小さな穴や表面の不均一が生じることがあります。

湿気のない場所で保管することが大前提ですが、たとえ密閉された状態で保管していても印刷が失敗する場合が多いため、印刷前にはフィラメントドライヤーで乾燥処理をしてから使用することを推奨します。水分を吸収したフィラメントは固くなり脆くなる特徴があるため、手で簡単に折れてしまうようであれば乾燥処理が必要だと判断しましょう。

3Dプリンターを購入する際には一緒に購入することを強くおすすめします。

Step5:マルチカラー3Dプリンターの選び方

入門機の選び方

マルチカラー3Dプリンターの入門機を出しているメーカーは多くありません。いま出ている中では一番最新のCreality Hi Comboが特に優れていて、最大16色まで拡張可能で価格も手頃なうえ、内部カメラとスマートフォンアプリによる遠隔操作に対応しています。将来上位機種を購入しても、フィラメント供給装置(CFS)が共通のため投資が無駄になりません。アート作品制作にも豊富な色数で表現の幅が広がります。

市場には他にもAnycubic Kobra3 ComboやBambulab A1/A1miniもありますが、Kobra3は内部カメラがなく遠隔操作が難しく、A1/A1miniは4色までの対応にとどまります。アート作品制作を目的とする場合、4色では表現に限界を感じることが多いため、8色以上使用できるCreality Hi Comboが一番オススメです。

項目 Bambu Lab A1 Combo Anycubic Kobra 3 Combo Creality Hi Combo
最大造形サイズ 256×256×256 mm 250×250×260 mm 260×260×300 mm
監視カメラ
スマホ連携/遠隔操作
最大速度 500 mm/s 600 mm/s 500 mm/s
最大加速度 10,000 mm/s² 20,000 mm/s² 12,000 mm/s²
価格 約96,000円 約86,000円 約78,300円
最大色数 最大4色 最大8色 最大16色
追加ユニット 約47,000円 約57,000円 約47,000円

《Hi Combo》

特徴:Ender-3 V3サイズでマルチカラー対応

造形サイズ:260 × 260 × 300 mm

コメント:名機と言われたEnder-3の特徴を引き継いだ最新の入門機。最大16色のマルチカラー印刷が可能。

最大速度:500 mm/s

最大加速度:12000 mm/s²

製品ページ:Creality Japan 公式ストア

上級者向けモデルの選び方

本格的な作品制作を目指すならコンシューマー市場で際立つK2 Plus Comboは最有力候補です。 最大速度600 mm/s、最大加速度20,000 mm/s²と業界屈指の印刷速度を実現し、350mm立方の広大な造形空間と簡単に16色まで対応できる拡張性の高さは他に類を見ません。内蔵カメラとスマホアプリによる遠隔操作、300℃対応ノズルと加熱チャンバーによる高機能素材への対応も魅力です。

Prusa XL(5-toolhead)やBambuLab P1S/X1Cも優れた選択肢ですが、大型造形と多色出力の両立、コストパフォーマンスではK2 Plus Comboが一歩リードしています。大型でインパクトのある作品を目指す私にとって、バイクヘルメットサイズの造形も可能なこの製品は実際の使用で期待以上の価値を証明してくれました。

《K2 Plus Combo》

特徴: 高速プリント、AIカメラ監視、49ポイント自動レベリング

造形サイズ: 350 x 350 x 350 mm

性能: 最大プリント速度600 mm/s、最大加速度20,000 mm/s²

機能: ダイレクトエクストルーダーを採用し、多様なフィラメントに対応、マルチカラー印刷可能(最大16色)

製品ページ:Creality Japan 公式ストア

K2 Plus Combo 3ヶ月間使用レビュー

K2 Plus Comboを使い始めて、その真価に驚かされています。競合機と一線を画すこの3Dプリンターは、クリエイターの可能性を大きく広げてくれます。

最大の特徴は圧倒的な多色対応力です。競合他社の中でも特殊パーツなしで最大16色まで拡張可能な機種はCrealityのK2 Plus Comboと入門機のCreality Hi Comboだけです。

また350×350×350mmという造形エリアも魅力です。Flashforge Creator 4やPrusa XLといった他社のハイエンド機種と比較しても引けを取らないサイズで、この造形サイズと多色印刷を両立した機種は他にありません。マルチマテリアルでフルサイズのヘルメットや大型プロップを一体成型できるのは大きな強みです。

スマートフォン連携も秀逸で、競合他社より一歩先を行きます。モバイルアプリを通じた遠隔操作はもちろん、AIカメラによる異常検知機能は長時間プリント時の安心感が違います。私は出張が多いのですが京都から横浜のプリンターを起動し、帰宅後に完成品を受け取るという体験は、まさに未来を感じました。

カーボンフィラメントなどの高強度素材対応も、趣味の範囲を超えた実用性を提供します。この多機能性と使いやすさを兼ね備えたK2 Plus Comboは、3Dプリンティングの新たな基準を打ち立てています。

最近のトレンド

最近のトレンドとして、既存機種のマルチカラー化モジュールの登場も注目されています。広く普及しているEnder3v3などをマルチカラー対応にできるため、既存ユーザーにとっても選択肢が広がっています。

ハイエンド機を選ぶ際は、造形サイズ、速度、多色対応という基本性能に加え、将来的な拡張性やコミュニティの充実度も考慮すると良いでしょう。

大型のEnder-5 Max(400×400×400mm造形サイズ)のような特化型モデルも、特定のニーズに応える選択肢として魅力的です。自分の制作したい作品のサイズや複雑さに合わせて最適なモデルを選びましょう。

Step6:実践!テストデータを印刷してみよう

3Dベンチマークについて

3Dプリンターを初めて使う際は標準的なテストモデルを印刷してみましょう。無料で公開されている代表的なテストモデルには以下があります:

3DBenchy: ボート型のモデル。オーバーハング、ブリッジ、細部の精度などをテスト

Stanford Bunny: 3Dグラフィックス研究の標準モデル

Suzanne: Blenderでおなじみの猿のモデル

Temperature Tower: 異なる温度で印刷される階層状モデル

Clearance & Tolerance Test: パーツの咬合性をテスト

All-In-One Test: 様々な精度テストができるモデル

KSR_FMD Test: 極限環境がテストできるデータ

特に3DBenchyは多くの3Dプリンターユーザーから愛されている標準テストモデルです。

3DBenchyを印刷してみよう

実際に3DBenchyを印刷する手順:

ダウンロード: 3dbenchy.comからSTLファイルを入手

スライサーの準備: 使用するプリンターに合ったスライサーをインストール

データの読み込み: スライサーでBenchyのSTLを開く

設定確認:

レイヤー高さ: 0.2mm(標準)

充填率: 20%

サポート: 不要

印刷速度: 50mm/s(初回は低速で)

プレビュー確認: スライス結果のプレビューで問題がないか確認

印刷開始: フィラメントをセットし プリンターを起動して印刷開始

印刷結果の評価ポイント: 3DBenchyの印刷結果を評価する際には、ボートの船首部分のスムーズさ、煙突の丸みと垂直度、デッキの平坦さ、窓枠のシャープさ、そして小さな詳細部分の再現性に注目すると良いでしょう。私の印刷結果は約7分と脅威的な細部までしっかり再現され驚きました。

3DBenchyは3Dプリンターの印刷速度のベンチマークとなっていて、K2PlusComboのように10分を切るようなものがあれば、それは驚異的な印刷速度だと判断できます。これはFDMの中でもトップクラスの印刷速度です。

Dummy13アクションフィギュアを印刷してみよう

3DBenchyのテストプリントが終わったら 次のステップとしてsoozafon氏が無料公開している、今3Dプリンター界隈で大人気のDummy13を印刷してみましょう。

Dummy13の特徴:

作者のクレジット記載さえすれば改変、商用利用も可能なフリーモデル

FDMプリンター向けに最適化された関節構造

印刷後に組み立てて可動するアクションフィギュア

ファンコミュニティによる多数のオプションパーツが豊富に無料公開されている

印刷設定例:

レイヤー高さ: 0.16mm(細部再現のため)

充填率: 15%(軽量化のため)

サポート: パーツによって必要

印刷速度: 45mm/s(精度重視)

まとめ: テストモデルの印刷は3Dプリンターの性能を理解する上で重要です。3DBenchyから始めて、成功したらDummy13のような複雑なモデルに挑戦しましょう。印刷設定を微調整しながら、最適なパラメーターを見つけることが上達の鍵です。データと実物をよく見比べて、自分でゼロから作るときにはどうすればよいのかよく考察します。

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